【EA開発ガイド】Part 1 EA開発概論 – Chapter 12 投資助言

FXを長年やっている人なら知っていると思うが投資関連の金融商品取引法(金商法)というやっかいな法律がある。何が厄介かというと悪気が無くても相手に迷惑が掛からなくても法律違反になってしまう可能性のあるところ。もともとは投資関連の詐欺に対応するために出来た法律なのだが、無害な人達への影響も大きい。そのひとつが「投資助言」である。EA販売後のバージョンアップなんかもこの投資助言の対象となってしまうため非常に厄介。FXや投資関連の情報発信をするなら知っておかないとまずい。本サイトは不特定多数への情報発信なので投資助言に該当しないことは確認済である。ただし、コメントの回答は投資助言に該当する可能性が高いため慎重に運用しなければならない。

注意事項

本稿は金融商品取引法について解説していますがその内容を保証するものではありません。参考にする場合は自己責任でお願いします。

投資助言について

金融商品取引法によって投資に対する助言は金融庁への登録が必要となっている。

投資の助言

FX関連の動画配信を見ていると「投資助言云々・・・」とっていることが多いが何なのだろうか?これは金融商品取引法(金商法)が関係している。投資関連は詐欺が多いので法律が厳しくなっているようだ。なので、投資に関する助言をする場合は金融庁への登録が必要となる。

投資助言業務とは「有価証券の価値等」や「金融商品の価値等の分析に基づく 投資判断」に関する助言を行う業務をいい(法2条8項 11 号)、最終的な投資 判断・投資実行は顧客が自ら行う点で投資運用業とは異なります。

引用:投資運用業等 登録手続ガイドブック

投資助言に該当するか?

投資助言というのがちょっとわかりづらい。詐欺等の被害を減らすための施策だと思うが善意のアドバイスなども法律違反になってしまう可能性も出てくる。

②投資助言・代理業に該当しない行為

イ. 不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時に購入可能な方法により、有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(以下「投資情報等」という。)を提供する行為

例えば、以下aからcまでに掲げる方法により、投資情報等の提供を行う者については、投資助言・代理業の登録を要しない。

ただし、例えば、不特定多数の者を対象にする場合でも、インターネット等の情報通信技術を利用することにより個別・相対性の高い投資情報等を提供する場合や、会員登録等を行わないと投資情報等を購入・利用できない(単発での購入・利用を受け付けない)ような場合には登録が必要となることに十分に留意するものとする。

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

書籍のように不特定多数の人が購入可能ならOKらしい。これはリストマーケティングなどで顧客を洗脳して落とすパターンを想定してのことだろう。たぶん「あなただけが購入できるスペシャルな投資情報でございます。」的なやつ。欲に目がくらむとありえない話でも簡単に騙されちゃうんだよね。

なので、本サイトのように無料かつ不特定多数への情報発信はもちろん投資助言に該当しないので問題ない。

a. 新聞、雑誌、書籍等の販売

(注)一般の書店、売店等の店頭に陳列され、誰でも、いつでも自由に内容をみて判断して購入できる状態にある場合。一方で、直接業者等に申し込まないと購入できないレポート等の販売等に当たっては、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

一時期本サイトの情報をまとめ販売しようと思ったことがある。こちらもネットショップ形式で販売すれば投資助言には該当することはなさそう。

b. 投資分析ツール等のコンピュータソフトウェアの販売

(注)販売店による店頭販売や、ネットワークを経由したダウンロード販売等により、誰でも、いつでも自由にコンピュータソフトウェアの投資分析アルゴリズム・その他機能等から判断して、当該ソフトウェアを購入できる状態にある場合。一方で、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

EAの販売も購入後のサポートが無ければ問題なしと。逆に有償の個別サポートやIB報酬は危ないかもしれない。買い切りのEAを売りっぱなしなら良いと思うが問い合わせは絶対あるよな・・・。

c. 金融商品の価値等について助言する行為

(注)有価証券以外の金融商品について、単にその価値やオプションの対価の額、指標の動向について助言し、その分析に基づく投資判断についての助言を行っていない場合、又は報酬を支払うことを約する契約を締結していない場合には、当該行為は投資助言業には該当しない。

例えば、単に今年の日本の冬の平均気温について助言するのみでは、投資助言業には該当しない。

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

わ・わかりづらい・・・。

ロ. 投資一任契約等の締結の媒介に至らない行為

媒介に至らない行為を投資助言業者又は投資一任業者から受託して行う場合には、投資助言・代理業の登録を得る必要はない。

例えば、以下aからcまでに掲げる行為の事務処理の一部のみを投資助言業者又は投資一任業者から受託して行うに過ぎない者は、投資助言・代理業の登録が不要である場合もあると考えられる。

a. 商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布・交付

(注)このとき、単に投資助言業者又は投資一任業者の商号や連絡先等を伝えることは差し支えないが、配布又は交付する書類の記載方法等の説明をする場合には、媒介に当たることがあり得ることに留意する。

b. 契約申込書及びその添付書類等の受領・回収(記載内容の確認等をする場合を除く。)

(注)このとき、単なる契約申込書の受領・回収又は契約申込書の誤記・記載漏れ・必要書類の添付漏れの指摘を超えて、契約申込書の記載内容の確認等まで行う場合は、媒介に当たることがあり得ることに留意する。

c. 金融商品説明会等における金融商品の仕組み・活用法等についての一般的な説明

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

EAの販売と投資助言

結論を言うと個人でのEA販売は難しい。金融庁に登録した業者を仲介しないとEA販売は事実上不可能である。

買い切りであれば問題なし

前述にもあったがEAを買い切りで販売した場合は投資助言の登録は必要ない。ただし、誰でも購入できる状態になっていない商品はダメ。「あなただけ特別に・・・」みたいなのは法律違反になってしまう。自分でネットショップとか構築して販売すれば問題ないだろう。

b. 投資分析ツール等のコンピュータソフトウェアの販売

(注)販売店による店頭販売や、ネットワークを経由したダウンロード販売等により、誰でも、いつでも自由にコンピュータソフトウェアの投資分析アルゴリズム・その他機能等から判断して、当該ソフトウェアを購入できる状態にある場合。一方で、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

サブスクリプション販売

最近流行ってるサブスクの携帯は金商法的にはNGらしい。レンタルも詐欺が多いらしいのでダメそうだ。やるなら売り切りでいくしかないな。

昨今、FX取引(外国為替保証金取引)や株式取引など各種金融商品の自動売買が可能であるとするソフトウェアを販売・レンタルしている業者が複数見受けられます。また、そのような業者の中には口座に入金させてその口座からの出金を求めても応じてもらえない等のトラブルを起こしている業者も見受けられます。

このようなFX取引(外国為替保証金取引)や株式取引等を自動で行うソフトウェアについて、会員制で販売又はレンタルする行為は、一般的には金融商品取引法上の投資助言・代理業に該当すると考えられ、金融庁や各管轄財務局等に金融商品取引業者(投資助言・代理業)としての登録を受ける必要がございます。

引用:FX等の自動売買ソフトの販売・レンタル業者についてのご注意|はじめてのFXなら外為どっとコム

保守サポート

買い切りのEAのサポートも投資助言の対象となるのだろうか?筆者のようなシステム屋さんからすると「保守サポートのない販売などありえない」である。致命的なバグがみつかった場合は差し替えないともっと大変なことになると思うのだが・・・。

なお、上記のように金融庁指針では、「当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合がある」とされているが、保守メンテナンスやOSやアプリケーションのヴァージョンアップに伴う単純なアップデートまでが全て含まれるわけではないと考えられる。

引用:投資助言業登録が必要となるか否かの判断の留意点(2022年後記改訂版)|牛島総合法律事務所|Ushijima & Partners

購入者への連絡

EAの販売ポータルに面白い記事があった。多分規模的に弁護士さんに相談しての結論だと思う。結論を言うと、「EA購入後に購入者との問い合わせ対応はNG」である。金融庁の登録が個人では事実上不可能なのを考えると、個人でのEA販売は不可能ということになる。

EAをはじめとする金融商品の自動的な売買を行なうソフトウェアは、過去に考えられたロジックをコード化したものでありますので、具体的な売買の指示をしていることにはならない。
よって、有償で対価を得たとしても助言行為にあたらないとの見方がございます。

しかし、ソフトウェアを販売した後に、無償であってもバージョンアップ、あるいは何らかのお客様対応を行なう場合には、販売代金に継続的なお客様サポートも含まれると考えられるとの見解もございます。

そのお客様サポートは、過去に考えられたロジックに影響を与えるものであれば金融商品取引法で規定される助言行為にあたるとして、金融庁への助言代理業登録が必要との判断が、現在までのところ為されております。

販売後にお客様に対して何らかのご連絡等を行なわないということは現実的ではありませんので、EAの販売は、金融庁に助言代理業登録を行なう必要があると判断いたしております。

従いまして、出品者様はあくまでコードの著作権を持つ方、金融庁に助言代理業登録を行なう弊社がお客様への販売等のサービスを行ない、お客様に販売した都度に、出品者様に対して著作権の対価をお支払いするサービスとして運営いたしております。

引用:EAの販売にあたり、金融の免許は何か必要でしょうか? – よくあるご質問(FAQ) – 自動売買・相場分析・投資戦略の販売プラットフォーム – GogoJungle

もし個人で販売するとしたら購入後の問い合わせに一切対応しないといったトンデモないことになってしまう。

・当EAは「完成済みで買い切り式のEA」であり、投資助言に抵触する可能性がある、質疑応答のよる直接的なトレード手法に関するレクチャーやアドバイスは一切行いません。

また、特定の銘柄についてや投資のタイミングなどにもお答えする事は一切できません。

・当EAのバージョンアップやプログラムの改修などの継続的なサポートも、投資助言に抵触する可能性があるため一切行いません。

引用:【単ポジEA(損切機能付き)】”元本から3倍以上・最大DDは2万円以下”

まとめ

ぶっちゃけ個人で簡単なEAを格安で販売しようかと思っていたのだが金商法的に無理なことがわかった。そもそも本サイトのコメントの返信も一歩間違えば投資助言に該当する可能性すらある。コメント対応はドメインパワーあがるのでなんとか続けたいがリスクが高そう。

イ. 不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時に購入可能な方法により、有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(以下「投資情報等」という。)を提供する行為

引用:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針:金融庁

EA販売は無理そうなのでソースコードでも販売しよっかな。これなら不特定多数の買い切りでサポートなしってのでいけそう。問い合わせあったらFAQで対応すればこれも不特定多数への情報提供なので問題ないだろう。そもそも詐欺撲滅のための仕組みなんだから有志でやってるブログが摘発されるのは納得いかん。ただ、法律は守るためにあるので基本はコンプラ重視で運営しよう。

ポイント
  • 投資助言は金融庁の登録が必要である
  • EA販売後の問い合わせ対応は投資助言に該当する
  • 不特定多数への商材販売は投資助言に該当しない

個人でのEA販売は金商法的に無理ですね。